国立健康・栄養研究所 Mr.サプリのサプリメントクイズ 医師向け補足
サプリメントクイズ 補足
サプリメントクイズ 補足
皆様、国立健康・栄養研究所のホームページにある「Mr.サプリのサプリメントクイズ」はいかがでしたか?
案外難問が多かったかと思います。でも、一般の方に正しい知識をお知らせする公共のサイトのご提供という意味では、非常に有意義なものだと思います。
さて、一部のサプリメント等「栄養療法」や「統合医療」また「アンチエイジング医療」をされておられる方々の中には、提示された回答に対して「ちょっとおかしいのでは?」と思われる方がいらっしゃるかと思います。
せっかくの栄研さんからの情報提供ですが、誤解されて伝わってしまってはとても残念ですので、ここで、私から補足ということで、医師・歯科医師向けのコメントをたしておこうかと思います。
また、全般的なことですが、同ホームページの「健康食品」の安全性・有効性情報というデータベースには、「使える情報が少ない!」というお声も上がっているようです。
ただ、掲載されている有効性情報は、下記のガイドラインによって掲載の基準とされています。
⇒基本的に有効性情報は、査読者が複数ついたヒト試験の学術論文のみを収集しています。査読者による審査のない学会発表、報告書、紀要、書籍については選考の対象外、試験管内実験・動物実験については学術論文であっても基本的には受理しない方針としています。
ですので、もしもご存知の論文で、有効性に関して何かしら知見を得た場合には、出典となる文献の印刷物(あるいはPDFファイル)に、掲載を希望する素材情報データベース中の「項目」と「文案」を添えて、タイトルを「素材情報の掲載依頼」とした上で
までお送り下さい。
1.有効成分が入っているサプリメントは体に効くよね?
確かに、「成分含有=製品の性能」とはならないことは覚えておく必要があるかと思います。では、特定保健用食品はどうか?というと、これもまた試験対象となった人のバックグラウンドが、基本的には健常人であることに注意が必要です。つまり、病気の治療ではなく、健康な人の健康維持と増進にトクホは使われるべきというところですね。
しかし、トクホかどうかは別として、実際にある製品を使用してさまざまなデータや臨床報告がなされていることも事実です。しかしながら、健康食品である以上、薬事法の規制によって、それらの効果効能はもちろん、事実であるデータの公表も制限されているのが実態です。
ドクターの皆さんであれば、こうしたデータがあるかどうかということを、直接メーカーにお問い合わせいただいてご回答を得ることができると思います。反対に、ドクターに対してさえ、企業秘密として情報公開を拒む場合は、その製品の使用はちょっと待ったほうがよいかもしれませんね。
2.有効成分が凝縮されていると摂りすぎが心配?
栄養素には、ビタミンAなど上限量が設定されているものもあります。足らない場合は不足のリスクになりますが、過剰の場合は過剰症という結果となってしまいます。
本来は、食品からこうした栄養素は摂取すべきですが、食習慣や生活習慣などにより、また、体のコンディションによっても、全てが食品から摂れる理想的状況に皆さんがいるとは限りません。
たとえば、総入れ歯の患者さんに、肉や野菜をたくさん食べてくださいと言ってもなかなかかみづらい。調理に工夫をといっても、一人暮らしで調理する人がいない。自分の分だけ特別に調理してほしいと、嫁さんに頼みづらい。
では、よくかめる入れ歯をまず作ればよいという話になりますが、ここに保険適応と自由診療の格差も生じる。全ての人に理想的な咬合の回復を保険診療の中でご提供することが困難。こうした現実があります。
これがまた、歯科医師が栄養やサプリと深くかかわるべき理由の一つだと思います。その方の咬合状態、すなわち、何がどれだけ食べられて、何が不足するのか、調理の工夫は可能なのか、ということを、問診票の家族構成と合わせて的確につかめるのは、実は歯科医師しかいないのです。
話がそれましたが、災害救助の場合も含め、医師・歯科医師がサプリを指導する場合には、上限量や過剰症を十分に理解した上で、有効成分が凝縮されたサプリメントを指導するという姿勢が大事かと思います。
3.成長期の子供や高齢者にサプリメントは不要?
結論からいいますと、「不要」となるような食生活、生活習慣を確立しましょう・・ということでしょうか。
サプリメントがこれだけたくさん市場に出てきたのは、トクホを除く市場規模でいうと、2002年に1兆円を超えたころかと思います。それより前1992年の時点では、サプリの市場規模は4200億円でした。2009年のトクホ規模は5494億円、2010年のその他の健康食品の市場規模は1兆1800億円で、約2兆円に迫る市場規模です。
つまり、健康食品をたくさん摂った子供たちの健康が10年先20年先にどうなってゆくのかは、これから結果が出るということですね。ですから、自己判断でドラッグストアで、インターネットで、コンビニでサプリを買って子供に与えるというのは、いわば将来のデータ蓄積への人体実験をしているようなものです。
しかし、妊婦さんの葉酸摂取など、場合によってはサプリメントが有用性を表すこともありますし、激しいスポーツをする青少年期には、やはりそれなりの補給が必要となる場合があります。
ゴロゴロしてゲームが趣味というお子さんと、スポーツ少年団で常に体を動かしているお子さんでは、必要となるものが全く異なりますよね。大事なのは、本当に必要なものなのかどうかというのを、サプリに詳しいドクターや、健康食品の専門資格を持つ人に相談してみるということですね。
ご参考:あなたの地域のNR検索(
こちら
)
将来的には、こうした感じで、サプリ相談ができるドクター(医療機関)としてご紹介してゆく予定です。
サプリに関心のあるドクターの皆さん、NR協会へのご入会をお待ちいたしております(入会等のご案内は
こちら
)。
4.一時的に体調が悪くなるのは、効果がある証拠なの?
「好転反応」と言われることが多いですね。ちなみに、医薬品の場合ですと、たとえば抗生物質でおなかがゆるくなるという症状が出ることもありますが、これはさまざまなデータがとられ、起こりうる頻度まで報告されているものです。
ただ、サプリメントの場合には、こうしたいわゆる「好転反応」に関するデータがほとんど蓄積されていないのではないでしょうか。もしもメーカーに問い合わせたときに、「○○%の確率でそのような症状が出ることが報告されています。その場合、のみ続けた場合には○○%の確率で症状が軽減され、○○%の確率で症状の変化がないようです。それは、のみ始めて○○時間後に起こるようです」といったエビデンスがあるかどうかですね。
エビデンスのない好転反応は本当に怖いです。みなさん、患者さんが「抗生物質をのんだら下痢が止まらないのだけど」と言われたときに、「ばい菌がやっつけられている証拠だから、続けてのむように」とは言わないですよね。
ましてやそういった副作用(好転反応?)のエビデンスの蓄積があまりないサプリメントに対して、のみ続けろといった場合には、最終的な責任はその会社はもちろん、先生、あなたに及ぶことをお忘れなく。
また、患者さんが自己判断で規定量以上のみすぎたり、お酒などと一緒にのむなど、様々な要因が絡んできますので、そのサプリ自体のせいとはいえない場合があります。ですから、そういったときには、どれだけ、いつ、どんな状況でのんだのかは最低限押さえておく必要がありますね。
5.年をとると○○が減る。だから○○を取ろうって本当?
何もかも摂る必要がない!とは言いません。○○が減るから摂ろうというよりも、○○が摂りにくくなるから補いましょうと考えたらよいかと思います。
先ほども書きましたが、加齢によりそしゃく能力が衰えると、やはり必要な栄養素が摂りにくくなることも考えられます。もちろん、運動量や基礎代謝が減りますので、摂りすぎてしまっては本末転倒ですけどね。
今の生活の基礎代謝量を確認し、それに見合った栄養素の摂取ができているかどうか、そして、それができていない場合は、食生活をまず見直す。しかし、実際に理想的な食生活がどこまで実現可能かはその方その方のバックグラウンドによって異なります。そうした時に、専門家と相談した上で上手にサプリメントを利用するといった姿勢が大切ですね。
6.成分が「天然」「自然」だから安全?
巷には「天然成分」「自然成分」をうたった商品がたくさんあります。ここでは、おもにフィトケミカル(植物化学成分)の場合が多いようです。いや、特に根拠もなくなんとなく「天然」って書くと売れそうだからという商品もあろうかと思います。
成分が天然だから安全とはいえません。逆に、化学合成成分だから安全ともいえません。それはちょうど、○○人だから勤勉、○○人だから野蛮と言ったり、A型だから○○、B型だから○○というのと同じです。
つまり、天然なのか化学合成なのかは、それイコール安全性の担保では全くあり得ないということです。大事なのは、天然であれ、合成であれ、原料の由来と製造工程の規格がきちんとしているかどうかです。
また、先のビタミンAの場合の答えの中にもありますが、ビタミンAのサプリは、ビタミンAのみ摂れる、でも、レバーはビタミンAのほかに、様々な栄養素また、未知の有効成分が入っていることもある、という内容がありました。
信用のおける天然成分由来で、きちんとした生産工程を経て製造されたサプリメントであって初めて天然由来のサプリメントの価値が出るものと思います。天然由来のサプリのほうが合成サプリよりも生体吸収率がよいというデータも出ていますが、天然由来の場合は、成分含有率が低いため、それなりにたくさん飲まなくてはならないという特徴もあります。
このあたり、サプリメントの専門家や、信用のおける製造工程を持つ会社の商品を選択する必要があるかと思います。
7.サプリメントって薬とは違うよね?
法的には違います。でも、全ての食品は、毒となるか薬となるか、基本的に量に依存するといわれるように、そのものを規定する要因は法的根拠に過ぎません。
薬は、日本薬局方に、その成分本質もしくは原材料が、もっぱら医薬品リストに掲載されればクスリです。反対に、CoQ10のように、かつてはクスリ、今はサプリとなった成分もあります。
高濃度ビタミン点滴であるとか、ビタミンD大量経口摂取であるとか、規定量内であればサプリも、規定量を超えるとクスリとして使用されます。逆に、ちょっと物議をかもしだしたレメディーを用いたホメオパシー(ごく荒っぽく言えば、毒をもって毒を制す治療・・・私はこれに関してはしたことがございませんので否定も肯定もいたしませんが)は、少ないほうがよいという考えですしね。
サプリの範囲で使えば健康「食品」、その範囲を超えれば「医薬品的使用」となります。ここで、医薬品的と書いたのは、厳密には医薬品ではないからです(もっぱら医薬品リストに収載されてはじめて医薬品)。
ですので、サプリメントは薬とは違いますが、医師等の専門家が適切に用いた場合には、医薬品的使用もありうるというところでしょうか。
8.サプリメントで病気は治るの?
治りません。正しく言えば、サプリメントとして使用する量で、そのサプリメント自体で病気が治るという大規模調査のエビデンスがありません。といったところでしょうか。
たとえば、上にも書きましたが、高濃度ビタミンC療法は、これはサプリメントとしてのやり方ではなく、れっきとした医療行為になります。これで治癒の傾向が見られたという報告は事実だと思います。
ここでは、一般の消費者の方が自己判断で病気の治療にサプリメントを用いることはやめましょうという意味で、「サプリメントで病気は治りません」とされているということでご理解いただければと思います。
9.専門家が勧めているサプリメントは安心?
その根拠が大事だと思います。専門家が独自の判断で発言しているのか、それとも、多くの文献データベースを基に発言しているのかでは大きな違いがあります。
勧める根拠が、サプリメントクイズの回答の中にあるような中立なデータベースに記載されている内容であれば、それは、専門家が発言しようが、アルバイトの高校生が発言しようが、内容的には同じ信用度となるわけです。
先生方も、患者さんにとってはある意味(うーん、ずいぶん意味深な表現・・・)専門家なわけですから、肯定する時はもちろんのこと、否定する時も、こうしたエビデンスに基づいたご指導をされることをお勧めいたします。
10.体験談って信用できないよね。
一般的にはその通りです。ただ、健康食品に関しては、「体感」というのも重要な要素にはなります。そこで、症状の変化の体感に関して、少しでも客観視できるようなスコアリングの手法を用いた調査に基づくデータがあるかどうかが重要です。
たった一人の経験が、それそのものが事実だったとしても、他の人に当てはまるかどうかは、やはり、ある程度の人数を調査して、統計学的処理を行って初めてデータとして読む価値が出てくるかと思います。
でも、臨床現場にいるものとして、個々の症例の積み重ねこそエビデンスといったところもありますよね。せめてその変化のバックグラウンドをきちんと記録して、少しでも客観的に評価できるようにしてゆきたいものです。
11.動物に効果があったら人にも効果があるの?
これは回答の通りですね。動物とヒトと逆の結果が出る可能性もありますし。参考までにという程度に収めておきましょう。
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