第11回日本抗加齢医学会にて発表する内容
活動報告
抗加齢医学会での発表内容
 サプリメントの表示制度とニーズに関する調査

【演題】
成人男女におけるサプリメントに関する表示制度の理解度と情報提供ニーズに関する調査


【発表者および共同研究者】
○清水洋利、守屋啓吾、久保田恵、森下貴祥、河田浩幸、竹内尚子、白石悦郎、古賀睦弘、古賀浩子

医療法人社団東風会 パールデンタルクリニック、岡山県立大学保健福祉学部栄養学科、広域医療法人全至善會 デンタルオフィス・ディテール、かわだ歯科、竹内歯科医院、白石歯科医院、こが歯科医院、ホワイトレーベル/ヒロデンタルオフィス

【緒言】

 飽食の時代である今日では、運動不足も加わり生活習慣病の問題が深刻になってきた。そこで、生活習慣病の予防や健康増進、またアンチエイジングを目的に、健康・栄養食品(以下サプリメント)が近年さかんに開発・流通されるようになり、日本人の食生活へも少なからぬ影響を与えていると考えられる。しかし、サプリメントは医薬品に近いものから一般食品と同様のものまでその範疇は広く、法的にも規定のあるものとないものがあり、成分表示もより複雑になり、消費者にとって理解しにくいものになっている。また、現在利用されている様々なサプリメントのうち、「いわゆる健康食品」が市場の90%近くを占めている。更に、サプリメントは利用方法を間違えるとその効果は少なく、むしろ身体に悪影響を及ぼす可能性もあげられるが、現状では適切なサプリメントの利用がどの程度行われているかは不明である。

 

【目的】

 本研究では、保健機能食品からいわゆる健康食品までを含むものを「サプリメント」と用語を定義し、歯科医院受診者の成人男女を対象にアンケート方式により、サプリメントの表示に対する理解度やニーズに関する調査を行なった。

 

【方法】

 アンケート回答者は727名(回収率100%)、その内アンケートのフェイスシートに未記入項目のあった79名を除き対象者は648名(平均年齢47.3±1.8歳)内訳:男性258人(平均49.6±1.7歳)女性390人(平均45.8±1.8歳)であった。

 対象に対しては口答と文章により研究の趣旨ならびに問診事項の項目であることを説明した後、アンケート形式にて記入してもらった。調査は、関東から九州までの歯科医院7箇所において実施した。

 アンケートの質問項目は、サプリメントの使用経験の有無、使用の目的、許可マーク等について、表示の規制について、表示の内容について、専門家の必要性、専門資格について、サプリメントの必要性の有無について調査をした。

 データ解析は、全質問項目について、性・年齢階級別に単純集計を行い、各質問項目の基本的な調査データを解析した。更に、男女の性別におけるサプリメントの利用目的の違いについては対応のないt検定を用いて検討した。最後に、本研究における研究仮説を4つたて、それらについては性別・サプリメント利用の有無別に4群に分け、クロス集計を行った後、X2検定により有意さを検定した。なお、分析にはエクセル統計2007を用い、有意水準は5%とした。

 

【結果】

1  現在のサプリメントの利用割合は男性全体では53%、女性全体では74%であり、女性の方が有意に高かった。年代別利用状況は男性では1040代が60%と高く、女性では1020代が90%と高く、男女とも経年齢的に利用率が低下し、80代では50%であった。

 

2  サプリメントの使用目的は男性全体では健康の維持が71%と最も高く、次いで病気の予防の12%、治療や効果効能、美容は9%だった。どの年代においても健康の維持が利用目的として有意に高く、1030代では男性でも美容を目的といた。

女性全体でも健康の維持が74%と最も多く、また美容が32%と男性平均の9%に比べ有意に高かった。1020代では美容が70%と最も高く、健康の維持増進の66%より唯一高い年代であった。

 

3  サプリメントの利用有り群において、複数回答の選択パターンの性差を明らかにした。男性では「健康の維持」を単独理由として利用しているものが645%と女性の406%に比べて有意に高値だった。一方、女性では「健康の維持」を単独理由として利用しているものが全体の中では一番多く、この傾向は男性と同様であったが、その割合は40.6%と男性に比べて有意に少なかった。

2番目は「健康の維持」と「美容」の二つを理由としたもの18.1%であり、男性の2.2%に比べて有意に多かった。同様に「病気の予防」「健康の維持」と「美容」の三つを理由としたもの4.6%であり、男性の0%に比べて有意に多かった。

男性に比べ女性にとって「美容」がサプリメント利用の大きな動機であることが、改めて示唆された。また、男性と異なり女性においては「美容」と「健康の維持・増進」が同時に選択理由に挙がっていた。

 

4つの仮説の検証】

サプリメントの利用経験の有無別に消費者の意識、サプリメントのマークや資格に関する知識の違いはあるのだろうかに関して、4つの仮説を立てて検証した。

 

1  サプリメントの利用経験のある人のほうが、利用経験のない人に比べて、専門家の必要性を感じているだろうか?

→男性ではサプリメントの利用の有無に関わらず、いずれも専門家を必要とする者が多かったが、両群に統計的な有意差はなかった。一方、女性では利用有り群がなし群より専門家の必要性を認識している者の割合が有意に高かった。

 

2  サプリメントの利用経験のある人のほうが、利用経験のない人に比べて、消費者が正しい知識を持つべき」と考えている人は多いのか?

→男女ともサプリメントの利用の有無に関わらず、消費者が正しい知識を持つべきと認識している者の割合はそうでない者より少なかったが、女性の利用あり群の方が正しい認識を持つべきと考える者が有意に多かった。

 

3  サプリメントの利用経験のある人のほうが、利用経験のない人に比べて、健康食品の表示マーク等の認識率が高いのか?

健康食品の表示マーク5種類(特定保健用食品、栄養機能食品という名称、病者用食品、FHFAマーク、JASマーク)について、認識の有無の名義尺度を認知合計数を認知度とする比率尺度に変換し解析した。男女とも利用有り群の方がなし群に比べて表示マークに関する認知度は高いが、有意差が認められたのは女性のみであった。しかし、もっとも認知度の高い女性の利用有り群においても5つの表示のうち2.1個と半分以下の認識にとどまっていた。

 

4  サプリメントの利用経験のある人のほうが、利用経験のない人に比べて、健康食品の専門資格に関する認識率が高いのか?

健康・栄養食品アドバイザリースタッフ制度の主要4資格(厚生労働省科学研究費の調査で報告された、栄養情報担当者・サプリメントアドバイザー・食品保健指導士・健康食品管理士)について、認知の有無の名義尺度を認知合計数を認知度とする比率尺度に変換して解析した。男性では利用有り群の方が無し群よりわずかに認知している数が少なく、一方女性では男性の逆で利用有り群において認知している資格数が多いもののいずれの性別でも統計的な差はなかった。また、いずれの群においても認知している資格数は4つのうち1つ以下であった。

 

【考察】

 利用目的や理解度やニーズに性差があり、女性では利用経験あり群のほうがサプリメントに関する知識や専門家の必要性を認識するきっかけになっていた。また消費者自身が正しい知識を持つべきとのニーズがあるにも係わらず、表示やマークの認識度、専門家の認知度が非常に低いことから、今後歯科医院おける抗加齢医療の一つとしてサプリメントの正しい知識の普及を行う際には、性差、利用の有無別にコミュニケーションチャンネルを区別して展開することが効果的であると示唆された 。

→男性は健康、女性は美容。利用者にはより詳しい説明を!

 

謝辞:本研究にご協力くださいました歯科医院のスタッフの皆様、並びにアンケート調査に協力してくださいました患者様に心よりお礼申し上げます。


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