【美容業務をとりまく制度】
美容行為は、医師法、歯科医師法、医療法、薬機法、あはき法等、様々な制度によって、当該資格保有の方以外が行うことが制限亜されています。とはいえ、各法律に定められた文章は、非常に抽象的で漠然としたものが多く、実際に何をしてよいのか、あるいは何をしたらいけないのかについては、明確には判断しがたいのが現状です。
実際のところ、法律というよりも、省令・通知、または判例と言ったところでその判断がなされています。ここでは、デントフェイシャルケアセラピーやいわゆる歯のホワイトニングに関連するところをピックアップしてみたいと思います。
美容スタッフがしてもよい範囲
【「医療行為ではないもの」として容認されている行為】
次にあげる行為は、一見医療行為に見えるものの、「医療行為とはみなさない」ものとされてます(抜粋)。
→体温測定、血圧測定、軽微な傷の手当、爪のヤスリがけ、口腔内の刷掃、耳掃除など
⇒根拠通知はこちら。
*歯科関連として
「重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること」
歯科医師や歯科衛生士以外であっても、歯ブラシを使うこと、綿棒を使うこと、指にガーゼをまいて口腔清掃することは、違法行為ではありません。ただし、疾病の診断や治療・予防はできませんので、歯科医院で行っている「ブラッシング指導」ではなく、あくまでも「日常的な口腔ケアのお手伝い」という位置づけと解釈になります。
*なお、「歯磨きサロン」についての通知が厚生労働省から出されていますが、直接厚労省に根拠を問い合わせたところ、昨今増加している歯科衛生士さんの独立開業形態について、歯科医師不在の場合、診断や歯科疾患の治療行為は出来ないことを明確化するためのものであり、上記の口腔清掃行為そのものを規制するものではないとのことでした。
【医業類似行為】
*医師免許、歯科医師免許がなければできないもの=医行為(歯科医行為も含む)。
*それ以外のものは、医業類似行為。
⇒参考サイト:総務大臣所管 日本予防医学行政審議会(こちら)
-医業類似行為の種類-
(1)通称:あはき法
・按摩マッサージ師
・鍼師
・灸師
・柔道整復師
(2)療術
・療術師
・カイロ、整体、リフレ、アロマ等
【判例】
元来、医行為と称されるものには、
⇒人の疾病の診察、又は治療、予防の目的をもって人体になす行為とする「広義」のものと、
⇒その広義の医行為中医師が行うものでなければ人体に対して危害を生ずるおそれがある行為とする「狭義」のものとがあり
*「狭義の医行為を業としてなすのが本条(医師法第17条)の規定する医業であると解すべきである。」 (S37.2.22 熊本地裁判決)
とあります。
また、最高裁における判例でも、
「医業類似行為は、人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為でなければ禁止処罰の対象とはならない。」
(昭和三五.一.二七 最高裁大法廷判決) 判決文はこちら。
となっています。
結局のところ、医学的に見てそれが「人の健康を害するおそれ」のない限り、上記の療術(エステ等)、カイロ、整体、リフレ、アロマ等を行っても、直ちに違法行為とみなすわけではないということが明示されています。但し、これには反論の裁判官の意見も判決書には併記されていますので、拡大解釈は禁物です。
何をもって「人の健康を害するおそれ」とするのかは、ケースバイケースで違ってきます。
・ケミカルピーリングの際のグリコール酸の濃度
・脱毛器の種類や出力等の規格
・ポレーションやサーマクールの機器等の規格
など、業界の自主規制は、こうしたことを踏まえて作られていますので、遵守が必要です。
なお、歯のホワイトニングに関しては、高濃度の過酸化水素等、医療機関でなければ取り扱いのできないものは結構ありますので、注意が必要です。
弊協会では、歯科クリニックで行っている歯のホワイトニングと区別するため、歯のブライトアップと表現しています。